裁判手続事例

お金を貸したけど返してもらえない、、

賃貸マンションから退去するにあたって返還されるべき敷金を返してもらえない、、

浮気をされたので、慰謝料を請求したい、、浮気をして慰謝料を請求された、、

 

世の中に争い事は絶えません。もちろん、誰もが好んで争っているわけではありませんが。

このページでは、尼崎法務司法書士事務所で取り扱った裁判手続事例をご紹介します。事例には、訴訟提起から判決までの裁判上の手続に関するもの、裁判外での和解交渉に関するものが含まれます。

 

なお、司法書士の「訴訟代理行為」は、民事事件かつ訴額が140万円を超えない事件に限られます。裁判外の和解交渉においても、140万円を超えての交渉等を行うことはできません。

 

【敷引特約と敷金返還請求】

 

依頼者は、20代の女性。

来所の経緯は、転勤をきっかけに解約したマンションを目的とする賃貸借契約において、マンション明け渡し後に返還されるべき敷金額について、家主ともめたようだ。家主は、預かっている敷金30万円のうち、敷引特約による敷引20万円及びクリーニング費用5万円の計25万円を差し引いた5万円のみを返還すると主張していた。

 

尼崎法務司法書士事務所では、依頼者から預かった賃貸借契約書の敷引条項を入念にチェックした上で、家主と電話・郵便により4、5回ほど交渉を行った。今回のケースでは、賃貸借契約書のうち、敷引条項の規定があいまいで不明瞭であったため、下記の内容での和解が成立した。

 

事件受任から約1カ月半程度で解決。

 

和解内容:家主は、平成●●年●月●日までに、敷金返還債務として、金25万円を、借主指定の口座に振り込む

 

 

雑 感

関西特有といわれる敷引特約。
賃貸物件を借りて入居した時点で、預け入れた敷金から無条件で一定額を差し引くという特約です。

もちろん、特約として一応有効なのだが、敷引の内容(何の費用なのか等)が不明瞭である場合、無効となる可能性もあります無効になれば、預け入れた敷金は、無条件で返還されます。ちなみに、敷金の返還請求をすることができる時期ですが、賃借不動産を、家主に明け渡したときです。

 

今回のケースでは、敷引特約が不明瞭であったため、その点を指摘することによって交渉がスムーズにいきました。

 

 

【貸金返還請求訴訟】

 

依頼者は、40代の男性。

来所の経緯は、過去にお金を貸した女性に対して本人自身で貸金裁判を行っているが、相手方に代理人がついており、日を重ねるごとに自信がなくなったということで相談にきた。

尼崎法務司法書士事務所の担当司法書士は、本人から、被告との関係、貸付の経緯等を慎重に聞き取り、継続している訴訟の訴状、答弁書、準備書面、証拠等を入念にチェックした。

 

本件訴訟の争点は、原告から被告への貸付の事実(手渡しで、金銭を交付した事実)及び原告提出の証拠(甲第1号証)の金銭消費貸借契約書の利息についてであった。

今回は、貸付の事実は省略し、金銭消費貸借契約書の利息に関する争いについてのみ記載する。

 

被告は、契約書に署名・捺印したことは認めるが、署名・捺印当時 には契約書の利息の欄は空欄であったと主張した。

つまり、被告は確かに借りたが、利息の欄の利率は、原告が後から勝手に記載したものであり、利息については支払い義務がないといったのだ。

 

合計5回の期日を重ねた結果、裁判所は以下のように判断した。

 

①金銭消費貸借契約書の被告筆跡から、同書面の利率は被告本人が記載したものと推認でき、

②原告が元利含めた貸金残金の返還を請求する旨の内容証明郵便を複数回送っていたこと、

③内容証明郵便到着後も被告が異議なく弁済を続けていたこと、

 

上記から原告の請求には理由があり、原告の請求を全部認容する。

 

事件受任から約3か月程度で勝訴判決を獲得。

 

 

 

雑 感

実際によくある貸金トラブルでも、特に多いのが今回のような「手渡し」による金銭トラブルです。

お金を貸し付けた(交付した)という事実は、原告がその立証責任(証明責任)を負います。しかし、いくら「貸した」と言っても証拠がなければ裁判所は認定してくれません。

 

「金銭消費貸借契約書」があれば、裁判では勝てる・・・そう思っておられる方は多いのではないでしょうか?

借用書や金銭消費貸借契約書が存在しても、それだけでは「貸付の事実」の立証にならない場合もありますので注意が必要です。

 

お金を貸すときは、借用書を作成し、なおかつ銀行振り込によって貸しつけることが大切ということと、

手渡しによる場合は、完全にあげるという気持ちでなければリスクを伴うということを改めて痛感しました。

 

 

【亡くなった配偶者の債務】

 

依頼者は、40代の女性。

来所のきっかけは、1年前に死別した夫の債権者(夫にお金を貸した人)が、「お金を返せ!!」と急に家に押しかけたことだ。 

 

債権者は、夫の署名捺印のある借用書を数枚持っており、早急に支払わない限り訴えるとのことだった。

 

 

依頼者から詳細を聞くと、依頼者は夫の財産(負債)を承継しており(相続)、もはや相続放棄を申し立てることはできないであ

っった。

※相続放棄・・・被相続人(亡くなった人)の死亡を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申し立てることによって、被相続人の

積極・消極財産のすべてを放棄し、最初から相続人(財産を承継する権利のある人)ではなかったことにする手続。

 

 

尼崎法務司法書士事務所では、依頼者及び関係者全員を事務所に招集し、それぞれの言い分を聞くことにした。

また、各自が保有している資料もすべて持参してもらい、入念にチェックした。

 

 

債権者から預かった書類を入念にチェックしていると、債権者が保有する借用書(複数枚あり)の一部の署名・捺印欄の筆跡

が他の借用書と違うことに気づいた。

また、依頼者から交付された資料を詳細にチェックしていると、当該債権者以外からも借り入れがあったものと推認される書

類がでたきた。

 

 

その後の展開は省略するが、結局下記の和解内容で裁判外和解をすることとなった。

 

 

 

和解内容:Aは、平成●●年●月●日までに、相続債務として、金○○万円を、B指定の口座に振り込む

 

 

雑 感

配偶者が亡くなり、悲しむ間もなく借金の取り立てがくることがあります。「こんな時にこなくても・・・」と思われるかも知れませんが、貸した方としては、「時効」という制度あるのでいち早く貸したお金を回収したいので仕方がありません。

 

ですが、本当に亡くなった配偶者がその債権者に借りたのかを確認せずに支払ってしまうと、また同じような債権者が現れる可能性があります。

 

また、間違いなく亡くなった配偶者が借りていたとしても、同じ債権者から違う借用書等を提示され、何度も支払いわされる可能性もあります。

 

お金を支払うときは、必ず書面(和解書等)に精算条項を入れることをお勧めします。

※精算条項・・・「本件に関し、甲・乙両当事者間には、一切の債権債務がないことを確認する。」など、事件に関し完全終結を決定づける文言。

 

 

今回のケースでは、依頼者・権利者の両方が譲歩した結果、裁判外で和解することができました。